僕はゴミ屋さんだ。

 

 

 

夏はアスファルトの照り返しが辛い。

 

冬は指がかじかんで痛い。

 

 

 

春も秋もいつだって、ゴミは街にあふれてる。

 

 

 

でも僕は一家の大黒柱だ。

 

大きい夢だって、ちゃんと持ってるんだ。

 

 

 

がんばろう。がんばれる。

 

 

 

朝、8時。

 

ゴミ置き場におばあちゃんが立っていた。

 

ぽつんと立っていた。

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

 

フツーに訊いた。ホントにフツーに。

 

 

 

「あのね。あの・・・。

 

ブレーカーが落ちちゃって。

 

あたし、直せないの」

 

 

 

やってくれるひと、いないのかな。

 

あ、そうか。

 

ひとり暮らし、なのかもしれないな。

 

 

 

「じゃあ僕がやるよ。オッケー。2階だね?」

 

 

 

フツーに体が動く。ホントにフツー。

 

 

 

おばあちゃんは。

 

 

 

背が低くて背中が曲がってて、

 

絵本なんかに出てきそうなひとだった。

 

 

 

「ありがとう。ありがとね」

 

 

 

おばあちゃんは、何度も頭を下げる。

 

 

 

ぜんぜん平気だよ。

 

ぜんぜん大したことじゃない。

 

 

 

笑顔でパッカー車に戻ったら、孫の手があった。

 

便利かもしれないぞ。

 

こんな寒い時期に、あんなことがまたあったら大変だ。

 

命にかかわっちゃうこと、じゃないか。

 

 

 

「今度おんなじことがあったらさ、

 

コレ使って直すといいよ。

 

届く? ああ、届くね、よかった」

 

 

 

またまたおばあちゃんは頭を下げる。

 

 

 

と思ったら、台所をガサゴソし、

 

ビールを2本、僕にくれた。

 

 

 

”そういうためにやったのではありません。

 

だからいただくわけにはいきません。

 

ご好意だけ、お受けします”。

 

 

 

日本人の美徳、かもしれないけれど、

 

僕は素直にちょうだいする方が好きだ。

 

 

 

 

 

ありがたく、今夜、?ませてもらおう。

 

 

 

「ありがとう! ありがとねー!」

 

 

 

手を振るおばあちゃんに、

 

僕も笑いながら、手を振り返した。

 

 

 

母は早くに死んじゃったけど、

 

僕はお義母さんと生活している。

 

 

 

お義母さんのおかげかな。

 

 

 

年配の方に、喜んでもらいたい、と思うのは。

 

 

 

「ほおーーーお! やる時ゃやるねえ。

 

ま、私の何分の一、くらいだけどさ」

 

 

 

妻はやっぱりシニカルに、

 

でも、目を赤くして、僕の頭をなでる。

 

 

 

僕は鼻の穴を膨らまし、ちょっぴり胸を張って、

 

ビールのおかわりを要求した。